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〜伝統食の見直し〜
 毎日を元気で過ごすには、まず食事の内容と少しの運動が重要です。しかしその「内容」を、私たちは正しく把握できているでしょうか?

 以前、会員だったある女性の方は、健康オタクかな?と思えるほどに、「健康に良い」と聞いたことは何でも試しておられました。一体どれだけの健康食品を試されたのか判りません。しかしその人は最近アレルギーが出るようになりました。すぐに病院で検査を受けましたが、厚生労働省が指定しているアレルギー物質を含む食品については、すべてシロの結果が出ました。その人は自然食品のお店でとても高い無添加、無農薬の食品を購入して食べていると言っていましたが、しかし同時に、とある講演会で玄米には毒があると聞いたので、それから玄米は食べていないとも言っていました。その講演会では、鳥は賢いので玄米を食べることはない、とも聞いたそうです。しかし我が家で余った玄米を裏手の神社に撒いていますが、毎日雀が嬉しそうに食べに来ています。それに、もし玄米が毒ならば、昭和以前はずっと玄米食を続けてきた日本人は、とっくの昔に全滅してしまっているでしょう。

 なぜこのような混乱が起こってしまうのでしょう。それは栄養素や単一の物質に、あまりにもこだわりすぎることにあるのではないかと思います。「粗食のすすめ」(新潮文庫)では、著者の幕内秀夫さんは、栄養素というものはまだ良く解明されていないので、その土地で採れるもの、季節のものを食べるのが良いと言っています。例えばお茶は、カテキンが良いので多く飲むべきだという意見もあれば、タンニンが鉄分と結合して貧血になるので控えるべきだ、という意見もあります。また以前はタコ、イカ、カニはコレステロールが多いから要注意と言われていましたが、今はタウリンが多いのでコレステロールを下げる作用があると言われています。他にも煮干しはカルシウムが豊富ですが、老化現象に関わる過酸化脂質も多く含まれていますし、にんじんはベータカロチンが多く毎日飲むように勧められてきましたが、アスコルビナーゼというビタミンCを破壊する物質が含まれているという学者も居ます。これでは正直、何を食べたら良いのか判らなくなる人が居ても不思議はありません。

 しかしそもそも、食事と言うものは「栄養素」だけが大切なのでしょうか?ビタミンCが豊富な果物と天然の黒砂糖を使った体に優しいシャーベットでも、真冬に食べれば体を壊しますし、無農薬野菜を使ったカロチンや微量ビタミン豊富なスープでも、真夏の炎天下で食べれば、熱中症になってしまいます。遺伝子組み換えなしの小麦と大豆、そして玄米も添加したコーンフレークと、放し飼いの健康な牛から撮れた牛乳という一見理想的な朝食も、実は牛乳は乾燥した地域向けの食品であり、日本というじめじめした気候の中で毎日飲んでいると、梅雨の間に毎日加湿器を付けるようことになってしまい、健康を損ねるという学者も居ます。

 幕内さんは、日本人は長い間、米などの穀類やいも類を主食に、野菜、豆類、海藻、魚介類を副食にし、体の構造もそれに適応してきたのだから、その伝統食に戻ろうといっています。伝統食が確立するまでの時代は、旅行に行ける人がほとんど居ない時代で、ほとんどの人が、生まれ育った土地で、その季節に採れた食物を食べていました。しかし昭和四十年代に食生活が激変し、昔の日本には無かった食物(パン、乳製品、ラーメン)や、滅多に食べることのできなかった食物(肉、油脂、砂糖)をたくさん摂るようなりました。その結果、確かに見た目の体格は良くなりましたが、以前にはあまり居なかったアトピーなどの病気の子供が増えたとも言われています。

 確かに微量ビタミンや、今までその役割がわからなかった物質を研究し、注目することは、それまで余り顧みられることのなかった食物の長所を見つけたり、思わぬ特効薬の開発につながったりすることもあります。しかし食物というのは、たったひとつの栄養素から出来ているのではありませんし、ほとんどの場合何らかの調理を行ってから食べるものです。実験室でこういう良い物質や悪い物質が見つかった、というだけで、果たしてその食物を大量に食べたり、今まで食べてきた食物を避けたりすることは、果たして良い結果になるでしょうか。今日、栄養学の専門家の中には、今はまだ未知の栄養素の方が多いのだから、その未知の成分を見込んだ食物そのもの作用に注目すべきだ、と言う人も居ます。

 伝統食は、長い間その地域に暮らし、その地域に合った身体を持った人々が、長年食べてきた経験の上に成り立っており、風土や大まかな体質まで、すべてを計算に入れた上で出来ている食生活です。中国医学で言う「医食同源」も、風土や季節、食べる人の体質を考えて食材や調理法を選ぶ、という考え方です。テレビで放映されているような、「これが良い栄養素」「この物質がよく効く」という情報に振り回される前に、もう一度長年の智恵に立ち返ってみてはどうでしょうか。


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