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〜生物学から見た「霊芝」の分類〜

★菌学と霊芝★

 霊芝は何千年もの昔から、中国ですぐれた効果を持ったキノコとして認識されてきました。ですが、そもそも「きのこ」とは何かを科学的に立証し、生物学的に霊芝がはっきりと区分されるようになったのは、ごく最近、20世紀以降のことです。それ以前の日本では、中国からの文献で「霊芝とは何か」を判断することが多かったので、実物を得ることのできなかったことから生じる誤解、また同じ漢字を使うことから生じる誤訳なども加わり、長く霊芝でないものが「霊芝」とされ、「霊芝は言われているほど素晴らしいものではない」ということさえ、言われてきました。
 ここでは、「生物学のうちでも菌学の見地から見た霊芝」をご紹介します。まずは科学的な見地から、霊芝とはどのように分類されたキノコであるかを見て、似たようなきのことの類別の一助としたいと思います。



★きのことは何か★

 そもそも、きのことはどのようなものなのでしょうか?定義されているのでしょうか。元日本菌学会会長、今関六也博士の文を引用します。
「どれほど大形のきのこでも菌類であり、かびの仲間で、俗にいう微生物だということである(中略)。かびもきのこも生活する本体は菌糸体といって、細長い細胞が一列に連なる菌糸からなりたつ。菌糸は枝を分け、あたかも真綿を引き伸ばしたようにまとまりのない形をして、土の中・落葉や木材の中を伸びひろがっている。これで生活するが、季節がくると繁殖のために胞子を、そして胞子形成の器官として子実体をつくる。子実体が大形の菌がきのこであり,微小のものがかびの仲間である。それだけの違いにすぎない。かび型の菌ときのこ型の菌とが,菌類の各分類群にいり混っていることからでも理解ができるであろう。」(注一)
 なお、今関博士は「還元者生物群=菌」と定義し菌類を整理しています。次に、分類中では、霊芝はどのような位置に置かれているかを見ます。



★霊芝の学名と日本語、中国語名★

 生物学の分類では、以下のような分類学的区分が用いられています。

界(かい)―門(もん)―亜門(あもん)―綱(こう)―亜綱(あこう)―目(もく)―科(か)―属(ぞく)―種(しゅ)

 最も大きな分類である「界」には、植物界、動物界、菌界、モネラ界などがありますが、界の数についてはまだまだ論争があります。他の分類についても、さまざまな議論があります。ここでは、霊芝という「きのこ」の話題を取り上げていますので、あまりにも大きな分類は省略し、「目」以下のみに注目します。

 一番の小さな分類である「種」が、個々の動植物やきのこに当たり、人間の名前で言うならファーストネーム、その上の「属」がファミリーネームに相当します。(属の後ろには発見者の名が記されます)。学名はこの属、種、発見者名で表記します。また、学名は通常ラテン語で表記され、世界共通の名称です。和名は日本国内においてのみ通用する命名ですが、学名、和名ともに、命名について学会などで厳しく審査、検討することにより、世界、もしくは日本国内での統一が図られ、同じ名称が重複しないようにチェックされています。中国でも同じように、中国国内共通の名前があります。

 世界共通の学名、日本語、中国語の順で「霊芝」がどのように分類されているかを、「目」以下について表記しますと、以下のようになります(発見者名は省略)。

Aphyllophorales―Ganodermataceae―Ganoderma―Lucidum
ヒダナシタケ目―マンネンタケ科―マンネンタケ属―マンネンタケ
非摺菌目―霊芝菌科―霊芝属―霊芝

 このうち、最後のふたつが「学名」に相当します。 つまり、「霊芝」とは「マンネンダケ」の中国語です。
 しばしば「霊芝」と間違えられるキノコ、及び「マンネンダケ」の近縁種については、以下で次のページで学名及び和名を、図で列挙してあります(注二)。
 ちなみに、霊芝の属する「ヒダナシタケ目」、椎茸などが属する「ハラタケ目」のふたつの「目」の中に、日常で目にするきのこはほとんど含まれています。



★霊芝とサルノコシカケは科から違う

 では、実際に菌学ではどのようにきのこを分類しているのかを、「科」以下で具体的に見てゆきます。
 まずは、霊芝が属する「マンネンタケ科」、そして、霊芝と最も間違えられやすい「サルノコシカケ」が属する「多孔菌科」の違いを見てみましょう。
 まず先に申し上げなければならないのは、実は「サルノコシカケ」という名前は単なる俗称であり、学術上の和名に於いては、現在如何なる「科」「属」、そして「種」にも「サルノコシカケ」は存在しません。(ただし、「〜〜さるのこしかけ」という和名は、種、属、科共に存在します)。
 いわゆる「さるのこしかけ」が多く属するのが、「多孔菌科」です。『原色日本新菌類図鑑』によれば、「多孔菌科」とは以下のようなキノコを指します。

〜管孔型の子実層托をもつ菌をPolyporaceaeとし、これを直訳して多孔菌科とする。この超広義の考え方は欧米でもほぼ戦前まで続いた。主として戦後、タバコウロコタケ科、マンネンタケ科、ミヤマトンビマイ科が分離独立した。(注三)

 霊芝が属する「マンネンタケ科」は、以下の通り。

〜子実体は有柄または無柄。コルク質〜木質、一年生〜多年生。傘の背面及び柄は固い殻皮でおおわれる。3菌糸型。胞子は卵形〜球状、二重の膜をこうむり、外膜は厚
く無色。内膜は黄褐色で多数の突起をおびる。木材の白色腐朽を起こす。きわめて特徴的な胞子は類似の多孔菌科と全く異なり、自然な菌群を形成する。(注四)

 子実体とは前述しましたように胞子形成の為の器官であり(つまりきのこにとっての生殖器官)子実体の構造が規則的に配列されたものが子実層です。この子実体の組織構造が複雑化したきのこでは特に子実層を特に形成する部分を子実層托(しじつそうたく)と呼び、この子実層托こそが外観に大きな影響を与えます。
 よって初期の菌学、つまり外観によって分類が計られていた時代には、この子実層もしくは子実層托がきのこ分類の決め手となりました。しかし顕微鏡の進歩により、同じ形状の子実層托をもつキノコでも、子実体を構成する菌糸が全く別種であったり、担子器(子実を形成するための特殊な細胞)の構造が全く別であったり、生殖そのものを司る胞子の成分が全く異なることが、新たに判明してきました。
 つまり、外観に頼る分類は、種を分けるに際し重大な条件である「生殖」に関わる部分による分類とはかなり一致しないことが判明し、従来の外観(子実層托の形状)による分類は徐々に改められています。戦前には存在した「サルノコシカケ科」について、今関博士は以下のような理由で否定しています。

〜従来のサルノコシカケ科なる和名は、サルノコシカケなる種も属もないので採用することができない。サルノコシカケは「猿の腰掛」で、木質、多年生の多孔菌型のきのこに与えられた通俗名で、多孔菌科、マンネンタケ科、タバコウロコタケ科のいずれにも猿の腰掛はある。まして多孔菌科の基準とされるタマチョレイタケPolyporusは一年生、有柄で猿の腰掛型には絶対にならない。すなわちPolyporaceaeをサルノコシカケ科とすることはできないので無難な多孔菌科とする。(注5)

 よって、現在は「〜〜さるのこしかけ」という和名の種は存在しますが、科学的な分類上においては、「サルノコシカケ」という名称は使われておりません。よって、「霊芝はさるのこしかけである」というのは全くの間違いであり、大きな誤解を招く表現と言えます。



★マンネンダケ属と「霊芝」★

 生物学的な分類では、どの分類段階においても、それぞれ科学的な判断と実証に基づいて、同じグループに分けるべき基準が示されます。更にその条件を良く備えているきのこは「代表的な種」と呼ばれ、しばしば属や科の名前に用いられます。マンネンダケ属は、その名の通りマンネンタケを基準とする属です。ただし、基準とする種について意見の分かれている属、科もあります(注六)。

 前出の図では、マンネンタケ属に属するキノコについて三種を挙げましたが、いずれも中国伝統の医学、薬学では「霊芝」もしくはそれに近い「きのこ」として扱われた種と考えられています。黄帝内経には、霊芝には「赤芝、黒芝、白芝、」があると書かれていますが、このうち赤芝が「マンネンダケ属マンネンタケ」に相当すると判明しています。マゴジャクシですが、これは近年まで「マンネンタケ属マンネンタケ」と思われていたものが、今関博士の研究により別種であることが分かり、「新しい日本(で発見された種)」という学名を与えられました。今関博士は「黒芝」との共通点を指摘してられますが、恐らく古代においては「赤芝」と混同されていた可能性も否定できません。シママンネンタケについては、「松山霊芝」ではないかと言われています。

 図で示したそれ以外のきのこは、しばしば「霊芝」と間違えられていますが、「属」どころか「科」すら違うきのこが大半を占めています。

 

★霊芝の見分け方★
 現在の菌学の分類が科学的な研究の上に成り立っていることは、前述した通りですが、しかし、実際に商店などで「霊芝」と呼ばれたきのこが本当に「霊芝」であるかを見る場合には、外見より判断するより他にありません。

 以下、マンネンダケ(霊芝)の外観的な特徴を挙げます。

◆マンネンタケ属◆
○マンネンタケ(霊芝・赤芝):傘は腎臓型もしくは円形で、くぼんだ位置もしくは円の中心に柄をつけます(つまりしいたけと同じような感じで柄がついている)。傘は1〜3センチの厚みを持ち、扁平もしくは丘状に湾曲。しわもしくはみぞが多く見られます。学名のLucidumは、ギリシア語で「光る」という意味ですが、ニスを塗ったような美しい光沢があります。色は非常に濃いココア色で、コルクの様に非常に固く、広葉樹に寄生し、寄生された木は枯死します。

○マゴジャクシ:外観は非常にマンネンタケと似ています。日本に生息し針葉樹に寄生。

○シママンネンタケ:小笠原諸島で発見された種で、日本ではビロウの枯れ木に発生。外観はやはりマンネンタケに似ていますが形は半円型が多いです。学名
「boninense」は小笠原諸島のこと。


◆その他の属◆
○ツガサルノコシカケ属
・ツガサルノコシカケ
…霊芝に比べて非常に傘が大型(10〜50センチ)。上側につやがない。しいたけ型の柄が付いていない。
・バライロサルノコシカケ
…傘の下側が淡桃色、上側にはつやがない。しいたけ型の柄がついていない。
・クロサルノコシカケ
…傘の上側に艶がない。

○オオスルメタケ属
・キヨミカシサルノコシカケ
…旧和名カシサルノコシカケ。傘に艶がない。しいたけ型の柄がついてない。

○ツヤナシマンネンタケ属
・ツヤナシマンネンタケ
…傘の光沢が鈍い。傘の下面が茶色い。

○スルメタケ属
・スルメタケ
…旧和名ニレサルノコシカケ。傘に艶がない。柄がしいたけ型ではない。 

○コフキサルノコシカケ属
・コフキサルノコシカケ
…傘の外側が大量のココア色の粉をまぶしたような観を呈する。柄がしいたけ型ではない。しばしば50センチを越える大型に成長する。俗称として「こふきだけ」。

 以上のきのこについては、何らかの薬効が認められるきのこもありますが、霊芝とは全く別種のきのこであり、古典漢方に於いて「いかなる体質の人が飲んでも副作用が無い上薬」と記述されているのは、霊芝のみです。

 仁易霊芝で販売している霊芝は、和名「マンネンタケ科マンネンタケ属マンネンタケ」(Ganodermataceae Ganoderma Lucidum)を、人工栽培したものです。



◆注釈◆

注1:『原色日本新菌類図鑑』   (編著:今関六也、本郷次雄 発行:保育社 1987年全面改定版)
   下巻282ページ
注2:「目」につきましては非常に大きな分類であるので省略し、「科」以下を示します。
注3:『原色日本新菌類図鑑』下巻P132
注4:『原色日本新菌類図鑑』下巻P175
注5:『原色日本新菌類図鑑』下巻P132
注6:それぞれの属を分ける基準についてですが、専門的に過ぎること、また霊芝の話題より離れるのでここでは割愛します。上記の本に判別方法まで詳しく掲載されていますので、ご参考にしてください。

 また、本文のうち、生物学的な件につきましては、上記『原色日本新菌類図鑑』を、参考といたしました。
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